あかつき通信

ライターあかつきの興味があることを綴ります

「家族喰い 尼崎連続変死事件」

事件の衝撃はだいぶ風化してしまったが、角田美代子と一党の逮捕とつぎつぎと出てくる死体、人物相関図を見てもややこしくてよくわからない関係など、当時はテレビを連日見入ってしまった。

 

この本の作者は、周囲の人々やまだ生きている被害者にインタビューを試みて書いている。すごい労作である。一気に読んでしまった。

しかし読みながらも読んでからも「なんでこんなことになってしまったのか」ぜんぜんわからない。

そのわけのわからなさがとても怖い。理不尽すぎる。最初は、まさかこんなことになるとは被害者の誰も思わなかったのだろう。

 

角田美代子は、難癖をつけて普通に暮らしていた家庭に入り込み、ちょっとした嫁姑や親子の対立を無理やり広げ、家族間で暴力をふるわせあうと同時に金を奪い取っていく。

 

この本で筆者が推察した。角田美代子の覚せい剤使用は腑におちた。

関係者にも使用しており、その結果、いつも大金が必要となった。また夜毎、被害者たちを寝させず、深夜の家族会議で家族同士に暴言や暴力で苦しませながら自分はすごく元気だったということからわかる。

 

また警察が、どこも「家族間の問題は民事不介入」と一切あてにならないことには憤りを覚える。結局、誰も救ってくれない。

隙を見て逃げれたのではないかとも思うが逃亡しても逃げ切れずに、捉まって皆殺されている。殺された谷口茉莉子さんなどは、何度も逃亡しながらも結局つかまって殺されてしまう。

つかまる不安を覚えながらも、いたしかたなく運転免許を更新しに行った免許センターで、妹と一味の男たちにつかまってしまう。助けようとついていった友人もなすすべもなく、警察に駆け込んでも力にならなかった。なんでこんなに角田美代子の前にみんな無力なんだろうと思う。

 

作者は角田美代子の不幸な生育暦を描いて、彼女の家族観や自分のつくった角田ファミリーへのこだわりについて言及している。しかし作者が角田美代子に迫ろうとすればするほどよくわからない。そんな風にまとめられてもピンとこない。角田美代子自身は、一番冷めていて、何にも感じでないような気がする。

 

やはり何にもわからない。

自殺してしまった角田美代子。させてしまった兵庫県警がゆるせない。

 

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相

 
家族喰い――尼崎連続変死事件の真相

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相